夢の話4
わたしは男を愛していたが、男はわたしを愛していなかった。わたしと男はごく薄い関係の知り合いに過ぎない。
わたしの手元に婚姻届がある。わたしは男の住所氏名生年月日本籍地を知る立場にあった。男の名の認印を押す。(男の名はごくありふれている。)証人欄は? 父の名を書く。それから母の。
役所へ行く。真夜中だった。すべてが同じ筆跡の婚姻届を時間外の窓口で提出する。胸がやぶれるほど不安である。男は役所の職員であった。
「あれ、これ○さんじゃない、○○課の」
「あー知ってる、イケメンの」
審査係の女性職員がそんな話をしているのを想像する。不安の中にかすかな快感がある。
何日かあとに自分の戸籍抄本を取った。筆頭者が男の氏名になっているのを見てうっそりと笑む。
今から事実をここに合わせてゆけばよい。なにかデートの口実は無いものか?
婚姻届の受理日は平成28年12月19日となっている。