夢の話1

 遠くの方で爆発が起こって、展望台からはそれがよく見えた。死ぬんだと思った。死ぬのは怖くていやだった。

 市民体育館は避難してきた人でごった返していた。私は靴箱の上に登って家族を探した。
 亡くなったじいちゃんが居た。じいちゃんは靴箱の上の私を見上げて言った。
「今度は一緒に死のうなあ」
「いやだ。じいちゃんと同じ歳ぐらいまで生きたい」
 じいちゃんは何も言わずににこにこしていた。
 私は靴箱から身体を乗り出して、じいちゃんの手を取った。じいちゃんの手は冷たくてぞっとした。お湯みたいにあったかいじいちゃんの手が大好きだったのに、いつまでたってもじいちゃんの手は冷たいままだった。


(私はじいちゃんが病院で亡くなったとき、掛け布団の中に手を差し入れて、そっとじいちゃんの手を握った。じいちゃんの手はまだ温かかった。お散歩に連れて行ってくれるときと同じに温かかった。温かかったから生き返ると思った。けれどじいちゃんは死んでいた。温かいままに死んでいた。すごく悲しいことだった。)